コラム

社交ダンス物語

2018/09/01更新

社交ダンス物語 235 眼科医、ボイスレコーダーと格闘

眼科医、ボイスレコーダーと格闘


 毎年11月、当院では患者さま向けの「糖尿病フェア」を開催しております。「糖尿病」ってどんな病気? 名前ぐらいは耳にしたことはあるけど、実際はよく知らないという方は少なくないのでは? 内科の先生によると、糖尿病は『血管が腐る病気』なのだそうですよ。(コワすぎ!)でも上手につきあえば、悪さしない病気とか。(ほっ)日本は糖尿病大国です。日本人の10人にひとりは糖尿病といわれますので。これはもう「ひとごと」ではありませんよね。

 恒例の糖尿病フェアは糸魚川総合病院の災害治療ホールにて、午前11時から開催されます。内科医による挨拶の後に、「糖尿病の基礎」についての講義あり。続いて11時40分からは歯科衛生士による「糖尿病と口腔ケア」の講義。そして12時から13時は栄養指導。500kcalの昼食試食会があります(試食会は事前予約が必要です。一食500円)。13時からはリハビリテーション科による「糖尿病の運動について」の講義。13時30分からは「糖尿病と眼」について眼科医(筆者)による講義と内容は盛り沢山です。パンフレット配布や食品サンプルプレゼントもあります。どなたでも参加できます。この機会にどうぞ。本年度(平成30年)の糖尿病フェアは、11月8日(木)です。参加ご希望の方は、糸魚川総合病院へお電話下さい!(025-552-0280)

 そこで、大変なことに…。この日は、半年以上前から予定を組んでいた『ダンス合宿』と重なってしまったのです。つまり、糖尿病フェアの開催日に、眼科医は病院に不在。だからといって「糖尿病と眼」の講義は中止という訳にはゆきません。昨年の糖尿病フェアは、PowerPointのスライドをスクリーンに映し、マイク片手に自分は熱弁いたしましたが、本年度は職員の誰かにパソコンをクリックしてもらうことで順次進む、音声付きのスライドを作成する運びとなりました。

 夜遅く、静まり返った眼科外来にて。総務課からお借りしたボイスレコーダーを前に、ひとり吹き込み開始。ボイスレコーダーで自分の声を録音するのは、今回が初めてのことです。まあまあの出来だろうと、ひととおり録音し終えて再生すると、あれ? 我ながら変。自分の話し声は、イメージと異なります。
「ダンスと同じだ。成子さん、早すぎだよ。」
リーダーに聞いてもらったところ、そのようなコメントあり。強弱を意識して、間をとって話したつもり、でも聞き手にわかりやすくしゃべることは、案外難しいことだったのでした。

 『医術は話術』と言われます。患者さまに病気を説明しても、充分に理解していただかなければ、医師はその責務を果たしているとは言えません。なのに、糖尿病フェアで流す自分のスピーチの録音は、うちのコーチャーから注意されているところの「あしゃしゃの踊り」同然、「あしゃしゃの語り」です。ダンスでは、自分達は格好良く踊ったつもり。でも後でビデオを見たら音に合っておらず、眼を覆いたくなることがあります。ましてや酔っぱらいが気持ち良く大声で歌っているカラオケなんぞは、シラフで聞いたら耳を覆いたくなる?

 それからというもの、納得のゆくまでボイスレコーダーと格闘です。
「みなさま、こんにちは。糸病眼科の池田です。本日は糖尿病フェアにお越し下さり、ありがとうございます…」
普段より高い声で話してみたり、学生時代に聞いた『ジェットストリーム』の城達也のイメージで、落ち着いた低音で話したり、どうしたら初心者に分かりやすく解説できるか、そして心地よく聞いてもらえるか、試行錯誤しました。スピーチのテクニックをNHKのアナウンサーから盗もうとしたり、黒柳徹子さんのキビキビしたトークを真似たり、『ジャパネットたかた』の社長さんの甲高い声を意識したり…。(声が頭に残りますよね)その時のこと。ふとひらめいたのは、天皇陛下! そう、声のトーンといい、穏やかさといい、品格といい、わかりやすさにおいても別格です。美しい日本語によるスピーチで、陛下の右に出る国民はいないでしょう。


☆トークはTPOに合わせて。医療従事者は『聖職』です。厳かな場(当院の糖尿病フェア)では、陛下をイメージいたします!(笑)

著者名 眼科 池田成子

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