コラム

社交ダンス物語

2019/08/16更新

社交ダンス物語 258 先輩が不良になった?

 読者の皆さま、大変なことが起きてしまいました。うちのマンションのお部屋で栽培しているアボカドこと先輩(第252話)に、異変が生じたのです。幹はひょろひょろで自力で立つことができなかった状態から、独り立ち出来るようになり喜んでいたのもつかの間。ヤジロベエのように伸ばしてバランスをとっていた2本のフリーアームの片方が暴走し出したのです。好き放題にジグザグ伸びたアームはマンションのお部屋を占領し、ベランダの窓の開け閉めも、ままならない状態です。 

「○○さん、不良の踊りだ!」
アボカドを見たうちのリーダーの発言です。明らかに先輩はマナー違反、チンピラ・ダンサーのようにも見えます。『不良の踊り』とは、自分ではカッコいいと思っていても、プロの先生の目には『不良』にしか見えない踊りがあるそうです。その一例が、スタンダードで男子の右肩が上がっていること。肩のラインをすっきりさせると美しいのに、勝ちに急いで腕に力が入り、競技会では右肩を上げて踊っている選手を見かけます。とりわけ自分たちと同じアマチュアC級に多いですね。うちのリーダーもそう。自分はダンスをしないのでイメージできませんという方がいらっしゃるなら、佐川急便の旧ロゴマーク、赤いフンドシをはいた飛脚を思い浮かべていただけたら宜しいでしょう。燕尾服を着た男の人が、まさにあのラインで踊っています。(ムンクの叫びマーク)

「適正なダンスを教えにゃならん。」
そう言ってうちのリーダーは、先輩のフリーアームの一部を、プツンとハサミでちょん切ってしまいました。
「先輩をハサミでちょん切るなんて、とんでもない!」
その時自分はショックを受けました。でも剪定してもらい、すっきりと安定した立ち姿勢の先輩を見ると、これで良かったのだと納得いたしました。ここはジャングルじゃないし、お部屋でヒトと共存するなら、それに相応しいスタイルも必要でしょう。

「○○さん、一緒にダンス上達しましょうね。」
 剪定されてからというもの、アボカドの幹はいささか太くなり、体幹もしっかりしてきたようにも思えます。目に見えてすぐに上達しないのが、ダンス。自分が適正な指導をいたしましたとばかりに、うちのリーダーは先輩を見て満足そう。先輩の今後の成長ぶりが楽しみです。えっ? チビ・ハゲもダンス上達しているかですって? チビ・ハゲカップルは、一時解散も危ぶまれました。(第250話)お尻が痛いうちのリーダーは、只今整体に通っています。かつてのように組んで、バンバン躍り込みは出来ません。ちなみに自分は、ベーシックの勉強中です。シャドーで踊ると支えがないので、おっとっとっと。
「あれっ? 壁ってどこ?」
「オトコがいないと、何もできないっ!」(Help!)
独り立ちができて、うちのマンションのお部屋で光合成しながら生きている先輩とは、切磋琢磨しあえる存在です。リーダーの痛いお尻が治って、秋の競技会では成果が発揮できますように!(笑)


☆ダンスでいう『壁』とは、進行方向の右側をいいます。ボールルームダンスは壁にそって、時計の逆まわりに踊ります。

著者名 眼科 池田成子

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