コラム

社交ダンス物語

2019/09/02更新

社交ダンス物語 259 にんげんだもの

 田舎人にとって、スーパーへ行くことは何よりの楽しみです。地元のスーパーでお見かけする80代の女性患者さま(第187話)は、毎日6、7回スーパーへお買い物に行かれるというから素晴らしい。さすがに自分は1日1回が限度。
「ラッキー! 今日はお刺身が残っていた。」
閉店まぎわに、赤札が3枚重ねて貼られた半額のお刺身をゲット。お刺身の相棒といえば、わさび。
「今夜は、シウマイ!」
シウマイの日はルンルン気分で、からしのチューブを購入。

 ダンスの練習を終えて夜遅くに帰宅。冷蔵庫を開けてギョッ! そこには、オソロしき光景が…。わさび、からしのチューブが、ゾロリと入っているのですから。しかも、使いかけ。
『はじまったか…』

 思い起こせば、脳の難病で現在療養中の母上は、数年前に自分と同じ症状がありました。実家の冷蔵庫を開けると、そこには開栓済みの『なめ茸』のビンが何本も入っているのです。(第93話)母と同じ脳の病気? それとも忍び寄る認知症? 自分もいよいよ始まったのでしょうか? コワくなって、リーダーに打ち明けました。するとリーダーは…
「忙しいからだよ。僕も同じさ。乾電池を切らさないよう買うんだけど、机の引き出しを開けたら『おーっ!』と悲鳴があがるよ。なんでこんなに沢山の電池が出てくるんだ?ってね。」

 『忙しいから』で、彼は済ませています。確かに、仕事とダンスと母の介護に追われています。でも、ホントにそれで大丈夫? 自分もリーダーも、脳の検査を受けた方が良いのでしょうか? ちなみに、脳細胞は1日に10万個ずつ死滅してゆくと言われます(これは老化現象)。かつて自分にダンスを勧めてくれた、うちの病院にいた脳神経外科の先生(第1話)は、こう言っていましたっけ。
「コワいので僕は絶対に、脳のCTやMRIは受けません。」

 さて、すさまじき光景は、うちのダンススクールにもありました。コーチャー(女先生)が、お教室の整理で戸棚を開けたら、ダンスシューズが入った箱が出てくるわ、出てくるわ。箱を開けると、男性用のスタンダードの靴ばかり。しかも新品と思われるもの。
「あれっ?」
男先生は、ニコニコ照れ隠し。うちのコーチャー(男先生)は、新潟県ボールルームダンス連盟の理事をしていて超大忙し。無理しすぎたのでしょうか? 昨年の11月に体調を崩し、救急車で搬送されました。搬送中の救急車の中で、コーチャーの脳裏に浮かんだこととは…
「これで、役をしなくて済む。」

 『役』といえば、うちの病院の副院長も大忙しです。糸魚川総合病院は、地域にひとつしかない総合病院です。「糸魚川の医療を守る!」と、熱く燃えています。
「医師には二つの責任と義務がある。ひとつは患者さんを診ること。もうひとつは、次世代を育てること。」
そう力説して、研修医の育成に全力で取り組んでいます。まさに、お医者さん主役のドラマに出てくる『熱血先生』ですね。ある日、病院のエレベーターに副院長と偶然乗り合わせた時のことです。そこで糸病・眼科の池田が目の当たりにした光景とは、行く先階がわからず、エレベーターボタンの前で立ち往生しているY副院長の姿でした。

 みんな、生身の人間です。
『にんげんだもの』
日本の詩人で書家である相田みつを氏の名言には、心が救われますよね。(笑)


☆副院長先生、お忙しいからです!!

著者名 眼科 池田成子

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