社交ダンス物語 5 「全新潟シニア競技ダンス大会の巻」

コラム

 四月一日、かきざきドームで開催されたシニア競技ダンス大会に初出場。この場合シニアとは、男女ともに35歳以上であることが出場の条件である。ダンス界では高齢化しているとはいえ、会場はもの凄い熱気にあふれていた。お相手をいろいろ変えて楽しむ社交ダンスと違い、競技ダンスは特定のカップルが組み、美と技を競い合う。数組のカップルが曲に合わせて同時に踊り、プロのジャッジによる審査にて、比較対象でより美しいペアが勝ち上がるのだ。よって外見上、人より目立つことが重要である。太もも露でキラキラ衣装の五、六十代のご婦人方の三センチはあるかと思われる長いつけまつ毛の根元には、光る石が煌めいている。男性の選手達は頭にふりかける(いわゆるハゲ隠し)を振りまいている。美を演出するための種々な優れモノがあることを、シニア競技ダンス会場で初めて知る。
 予選をクリアした選手達の背番号が貼り出された。私達のペアは見事に一次予選落ち!二次予選が始まろうとしているのに、姿を現さない選手達がアナウンスで呼び出されている。無理もない、老眼鏡がない限り、シニアの選手にとって掲示板に貼り出された採点表の小さな活字を読みとるのは困難だ。眼科医として頷ける。
 会場で、両眼の上方視野が欠けていることに気が付いた。網膜剥離になったのだろうか・・・踊っている場合じゃないぞ!と慌てたが、ずれ落ちたつけまつ毛の影であった。ちなみに眼科医である私はこのとき初めて、生涯無縁と思っていたつけまつ毛をつけたのである。(苦笑)

著者名 眼科 池田成子