コラム

社交ダンス物語

2020/04/01更新

社交ダンス物語 273 来たら対応

「機動班を出動させます。」
 国道に異常発生や苦情の通報を受けると、夜間・休日を問わずうちのリーダーに連絡が入ります。リーダーは状況で割り振りし、緊急対応の指示を出しています。『来たら対応』ですね。国道深さ4メートルの陥没、車両火災、毒物のまき散らしなどシビアな通報もありますが、最も多い国道の異常は道路の落下物だそうです。田舎道の国道50キロ管内では、年間1200件くらい。プラスチック、布、ビニール類など。木材や鉄類、自動車部品もあり。その他として、動物の死骸も少なくないそうです。年間約100件の通報あり。犬やネコ、タヌキ、キツネ、サル、イノシシ、鹿もいるそうです。可哀相ですよね。道路を横断しようとして、車に跳ねられてしまったのです。

 落下物の連絡が入り、それが動物の死骸と聞くと、うちのリーダーはガッカリするそうですよ。
「それって、ボクのこと?」
つまり、下のクラスのアマチュア競技選手を連想するのだそうです。自分たちチビ・ハゲのようなC級以下の選手は、試合で他の選手とぶつかりそうになっても、回避する手段がとれません。とりわけ、フォーラウエイ・リバース&スリップ・ピボットに入って、「さあ、前進だ!」の際に、進行方向に他の選手がいたら、そのまま突き進むのみ。その結果、車に跳ねられた可哀想な動物同然、派手にぶつかるか、もしくは避けようとして体勢を崩し、佐川急便の旧ロゴマーク『赤いふんどしの飛脚』のポーズをさらすかです。(涙)

 競技会は十数組の選手達が、一つのフロアで一斉に踊ります。減点はされませんが、よその選手との接触は不利。その点、A級・B級選手はスマートです。踊りが素晴らしいのは申し上げるまでもありませんが、試合では選手同士の接触はほとんど見られません。進行方向に相手がいても、見事にかわします。止まって相手を行かせてから動く、もしくはルーティンを変えるなど。瞬時に衝突を回避する手段がとれるのです。他方自分たちのような下のクラスは、余裕なし。「勝ちたい、勝ちたい」と餓鬼のようになって踊り、イノシシのように進行方向めがけてまっすぐに突進。その結果、激しくぶつかりまくりです。チビ・ハゲを例にとっても、F級時代のスローなんて、その最たるもの。「来ないでー」と、試合中は対戦相手に心の中で叫んでいましたので。(苦笑)

 これは競技ダンスに限りません。何事も「来ないでー」ではなく、「来たら対応」。世の中『モンスターペアレント』や『モンスターペイシェント』という造語があるくらいですから。さて、前段のお話に戻ります。くさりを外されたワンちゃんやお猿さんが、道路を横切ろうとした際に車が来ても、危険を察知してその場で止まっていれば跳ねられずに済みます。これはまさに、自分たちへの教訓です。競技会のフロアを安全に駆け抜けるために大切なこと、それはリーダーさんが「ぶつかるかも!」とキケンを感じたら逐次止まり、1(ワン)のカウントで踊りだす準備が出来ていること。
「試合で止まってなんていられないよ!」
そうですよね。お気持ちお察しいたします。(笑)


☆パートナーさんへ、くさりを外さないで下さい。

著者名 眼科 池田成子

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