コラム

社交ダンス物語

2020/05/01更新

社交ダンス物語 275 見える敵、見えない敵

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため外出自粛で運動不足、ジムも体育館も休業です。体重が増えたという方もいらっしゃるのではないでしょうか? 自分も、おへそ周りが気になります。運動といえば、自分の場合はボールルームダンス。平日の晩は病院の講堂で、2時間ばかりダンスの練習をしていました。土曜日は朝に入院患者さまの回診を終え、お隣の上越市のダンススクールへ向かい、午後からレッスンを2時間受けていました。日曜日は回診を終えた後に病院の講堂でダンスの練習をするか、もしくは富山のダンスホールへ行って、3時間以上踊っていました。(クオリティの低い踊りではありますが。)

 ダンススクールのある上越市にコロナの感染者が出てからは、ダンススクールでのレッスンも自粛。安心して踊れる所は、うちの病院の講堂ぐらいと思っておりました。去る4月10日の金曜日の晩、ダンスの練習をするために講堂のドアを開けて、びっくり仰天! そこには、奇妙な光景が…。間隔をあけて、椅子がぽつんぽつんと、まばらに配置されています。しかも、『眼科』『外科』『泌尿器科』と書かれた貼り紙が、椅子の前に掲げてあります。つまり、病院の講堂(自分にとってのダンス道場)は、コロナウイルス感染防止のための「臨時待合所」になっていたのでした。(涙)

 ダンスが出来ないとなると、次にやることはお勉強ぐらいしかありません。医局へ戻ると、勉強嫌いの自分は最新号の医学雑誌を広げて、次々と読んでいました。
「お勉強も、悪くないわ。」
それから帰宅。春の競技会で着る予定だった、ひさや製の鮮やかなマンゴー色のドレスを眺めている自分がいました。
「いつ、ダンス出来るの?」
モヤモヤした気分。
「すっきりしたい!」
すると、今までさほど気にならなかった、おうちの中のいろんなものが見えてきました。台所の床やシンクの汚れ、お風呂場の鏡についたウロコ、結露で出来た窓枠の黒カビに、賃貸で入居した時からあったガスコンロの頑固なコゲなど。(お掃除のプロも、落とすことができなかった?)
「よし! 落としてやるっ!」
ダンスの競技会は全て中止。ならば、対戦相手はお部屋の汚れです。

 汚れを落とすと言ったものの、敵は手強い。お風呂場の鏡についたウロコ、毎日シャワーで洗い流しているのに、白く雲っています。市販の研磨剤入りクレンジングシートで、腕が痛くなるまで磨きました。しかし汚れは一向に落ちません。その難易度は、競技ダンスでいうならB級か? かないません。水道水の中のミネラル成分が、結晶になってこびりついているのですね。ならば、お酢の力です。キッチンペーパーをお酢で浸して、鏡一面に貼付けました。さらにその上からサランラップで覆いました。ひたすらこれの繰り返し。第4ラウンドが終了した頃から、先が少し見えてきました。なお、お掃除のプロも落とせなかったガスコンロの頑固なコゲ、その難易度は神様クラス! ダンスで言うならA級でしょう。
「♪思いこんだら 試練の道を 行くが男の ど根性…」
TV・アニメ『巨人の星』の主題歌を歌いながら、女のど根性で磨きました。
「何それ? 何時代のお話?」
若い人から、そう問われそう。平成生まれの方にとって『ど根性』とは、古事記さながら日本最古の歴史書に記されている、いにしえの言葉?

 新型コロナで外出自粛。病院は家族も面会禁止です。脳の難病で入院なさっている母上(第274話)にも会えません。外出自粛のイライラ・ストレスと、どう向き合うか? アプリで登録して、スマホで知らない誰かとチームを組み、『つながり』で乗り切っている方もいらっしゃるようですね。機械音痴、石器人の自分は、イライラ・ストレスを『お掃除』で発散しています。神の領域を除いて、自宅はピカピカになりました。最後に、汚れは見えますが、ウイルスは見えません。見えない敵ほど手強いのですね。今は辛抱。自分に負けるな! 今が正念場。読者の皆さま、共に試練を乗り越えましょう。


☆ダンスができなくても『ダンス物語』は書き続けます!(笑)

著者名 眼科 池田成子

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