コラム

社交ダンス物語

2021/06/15更新

社交ダンス物語 302 もぐらは語る 

 皆さまこんにちは、自称もぐら、糸病眼科の池田です。「えっ? モグラ?」不思議に思われるかもしれません。皆さま、眼科にはどんな印象がおありですか? そう、暗いですよね。そもそも検査室には窓がありません。診察室の窓は、暗幕か黒いブラインドで覆われ、自然光を完全にブロックしています。アゴ台にアゴを乗せて、眼に光を当てられる検査(細隙灯顕微鏡検査)を受ける時も、ルームライトオフ。部屋の電気は消されます。眼科の手術をしている時も、手術室は真っ暗。眼科医は暗いお部屋で、顕微鏡とにらめっこしながら、お仕事をしています。自然光から遮断された部屋に長時間座っておりますと、外は晴れなのか、曇りなのか、昼なのか、夜なのかも分かりません。仕事熱心な眼科医ほど、生涯のほとんどを地中で過ごす『もぐら』のよう?(笑)

 では、なぜ眼科は暗いのでしょうか? それは眼球の組織が透明だからです。ここでちょっと専門的なお話をいたしますね。眼球には透明な組織があります。角膜、水晶体、硝子体、前房、網膜がそうです。これらの透明な組織は、散乱光や直接照明では、詳細が分かりません。そこで周りを暗くして、細い隙間から出された光で照明し、これらの組織を断面的に観察することで、詳細が判明できます。アゴ台にアゴを乗せて眼の検査を受けている時、光の方向や強さが変わりますよね。眼科医は光の当て方を変えながら観察しています。そうすることで、角膜、水晶体、さらにその奥の眼底の観察が可能になります。そんな専門的な話、難しくて分からないという方は、水族館の水槽の中で、ゆらゆら浮遊しているクラゲを思い浮かべて下さい。クラゲも透明です。暗いお部屋で、LEDライトで照明されることで、透明な姿や動きがよく分かりますよね。

 前座が長くなってしまいました。では、本題に入ります。自分は基本的に、平日の日中は自宅にいることはありません。帰宅したら、薄暗いか夜中です。帰宅して、先ずはマンションのお部屋の電気をつけます。お部屋を見渡すと、まあまあキレイ。床もそんなに汚れていないし、キッチンのテーブルも壁も白く見えます。しかし、休日や祝日の日中に、同じ部屋を見渡すと愕然といたします。
「汚いっ!」
夜中の人工光の中では浮かび上がらない汚れが、自然光では如実に見えるんですね。キッチンの床の細かいホコリや飛び跳ねたお汁の跡、自分の足の裏の跡も分かります。白い食器棚についた手指のあぶらや、壁のしみも気になります。平日の朝はお風呂場を清掃した後に、さっと掃除機をかけて慌ただしく職場へ向かうので、汚れにはさほど気をとられません。でも、休日になると、見たくないものが続々と見えてきて、あまりものオソロシさに眼科医は目を覆いたくなるのです。ブルー・サダデー、ブルー・サンデー。(涙…笑)

 もぐらは語ります。自然光は恐るべし!ここで、眼科の診察室や検査室の床や壁は大丈夫なのかと問われるところですが、糸魚川総合病院は休日の日中に、お掃除のプロにお任せしているのでご安心を(第254話)。ところで、自然光から遮断された暗い空間といえば、ダンスホールもそう言えます。コロナが流行して、最後にダンスホールへ行ったのは、いつのことだったでしょうか? ダンスホール、そこはうす暗くて、赤やオレンジや青の照明、そしてミラーボールが回っています。目に特殊なフィルターが、かけられたかのよう。女性のお客さんはミニスカートや、背中バックリのドレスで踊っています。しかも皆さん、ラインは抜群。自称もぐら、暗い所で詳細に観察するのはお手の物の眼科医ですら、ホール内の妖しい人工光では、ものの詳細の判明は不可? いはんや健全な紳士・淑女においてをや。


☆ダンスホール、そこは80になっても、お嬢さん!?(笑)

著者名 眼科 池田成子

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