コラム

社交ダンス物語

2021/12/01更新

社交ダンス物語 313 リーダーとパートナーの会話 30

 休日の病院の講堂には、ダンスの練習に挑む、病持ちチビ・ハゲ50代独身男女の姿あり。
「腰を曲げては、いけません。ひねっても、いけません。重い物を持っても、いけません。腰に振動を与えては、いけません。車の運転もダメです。」
脊柱管狭窄症で腰の手術を受けて間もないリーダーは、ドクターストップがかかっています。かつては痛くて歩くことはおろか、立つこともままならず。今は痛みを感じつつも、そこそこに歩けます。主治医の先生からダンスのGOサインが出ていないというのに、リーダーはこっそりダンスの練習に挑戦。(悪い患者?)パートナーは講堂のテーブルの上に、練習前のおやつとお茶をセットしました。(悪い医者?) CDとカセットデッキを眼科外来から運び出し、音響もセッティング完了。これで準備万全と思いきや…。
「あっ! シューズがない!」
いそいそと、眼科外来へ戻ります。ダンスの靴は、眼科診察室の机の引き出しの中にあります。

パートナー:「3ヶ月ぶりに、ラテンの靴を履いたわ。」
リーダー:「成子さん、大変だ! 靴が履けない。」
パートナー:「え?」
リーダー:「腰が曲がらないんだ! 靴の紐が結べないよ。」
パートナー:「足を骨折した時(第294話)、手術の後は膝も足首も曲がらなかったわ。だから、パンティーに足を通せなかったの。しばらくの間、ひもパンだったわ。」
リーダー:「成子さん、ふんどし履いていたの?」
パートナー:「フンドシじゃないわ! ヒモ・ショーツよ!」

 腰の手術を受けて間もないうちのリーダーは、屈むこと不可(涙)。靴下を履くこともままなりません。そこで、工夫が必要です。彼は椅子に腰掛け、重力に逆らい足を上に挙げました。腕を伸ばし、宙でラテンの靴ヒモを結びます。
リーダー:「履けた!」
パートナー:「ダンスできるの?」
リーダー:「やってみる。」
競技選手として、往生際の悪さは『天下一品』です。(笑)

リーダー:「振動はダメ。踊れそうにない。」
パートナー:「ラテンは、男子はスッと立っているだけでいいわ。マーカス・オム先生(世界プロ・ラテンファイナリスト)をお手本にね。女子をコマのように動かせば良いのよ。」
リーダー:「わかった。僕は腰が痛いから、足踏みしているよ。代わりに成子さんが動いて!」
パートナー:「了解!」
ミュージック、スタート。自分たちにとって、3ヶ月ぶりのダンスです。種目は愛の踊り、ルンバ。2019年、コロナ前の新潟県選手権でかかったドラマティックで格調高き曲をセレクト。さて、肝心の踊りは…。
パートナー:「え”? 踊ったら、震度5強! 3ヶ月間ダンスさぼったら、立てないし、歩けないっ!」(涙…涙)


☆ピアノの練習は1日さぼったら、自分でわかります。3日さぼったら、先生にバレます。1週間さぼったら、聴きに来て下さるお客さまにもわかると言われます。ダンスもしかり?(ムンクの叫びマーク!)

著者名 眼科 池田成子

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