外科Surgery

外科スタッフは常勤4名で患者さんの治療にあたっています。

日進月歩の医療の中で、最新の医療技術、知識を取り入れ、富山大学消化器・腫瘍・総合外科の医局スタッフとも連携し、この地域の患者さんに高水準の外科医療を提供することを目標としています。高齢者の多い地域であり、手術を受けられる患者さんの平均年齢も年々高齢化してきました。高齢になればなるほど、循環器疾患や呼吸器疾患など別の病気で治療中の患者さんも多く、安全な治療を行うには手術前後の管理が極めて重要となってきます。術前外来にてしっかりとお話しをお聞きし全身の検索を行い、術前検討会でこれらを確認することで、個人の状態に応じた安全かつ有効な治療を行っています。

また、手術が必要な病態において、病院との関わりは手術時のある一定期間だけでは不十分で、定期的な通院治療や長期間の経過観察が必要となる場合がほとんどです。急な変化が起こりうるがんなどの悪性疾患では殊更です。そのため身近な地域の病院として、患者さんから信頼していただけるよう、外科医師、病棟・外来看護師のスタッフが、日々学びの姿勢で一丸となって診療にあたっています。

一人暮らしの高齢者が病気になった時、離れて生活するご家族が考えるのは、「地元がいいけど糸魚川総合病院に任せて大丈夫だろうか?」という点です。私どもが実際に行なっている手術数とその種類、低い手術死亡率などの情報をとおして安心して選択していただければ思います。

外科では、下記に示す消化管疾患、肝胆膵疾患、乳腺・甲状腺疾患、腹部ヘルニア疾患に対して治療を行っています。また下記疾患以外にも市内で唯一の総合病院であり、一次救急病院として腹部救急疾患にも対応しています。

診療内容

消化器がんの治療に際しては、各がん毎にガイドラインが公表されています。我々はそのガイドラインに記載されている治療アルゴリズムを基本に、週一回内科外科合同で開催しているキャンサーボードにて検討した上で、個々の患者さんに応じた治療方針を選択し皆さんに提示しています。

またがん以外の良性疾患においても、外科術前検討会で十分検討した上で、治療方針を決定しています。患者さんの病態に応じて治療方針を決定することで、安全かつ有効な治療を行うことができると考えています。

手術手技に関しては、腹腔鏡下手術が、術後回復が早いこと(創部が小さいため痛みが少ない、体の負担が少ない)、拡大映像効果で微細な手術が可能、などから導入が進んでおり、当院でも積極的に取り入れています。大腸(結腸、直腸)がんでは腹腔鏡手術を基本とし、また胃がんも適応患者さんを検討し導入を進めています。良性疾患では年間50例を越える鼠径ヘルニア根治術をはじめ、胆嚢摘出術、虫垂切除術も腹腔鏡下手術を標準術式としています。

対象疾患

消化管疾患

食道がん、食道裂孔ヘルニア、胃がん、胃十二指腸潰瘍穿孔、結腸がん、直腸がん、虫垂炎、下部消化管穿孔、消化管間質性腫瘍、痔核、痔瘻

肝胆膵疾患

胆石症、胆嚢炎、肝がん、胆管がん、胆嚢がん、乳頭部がん、膵がん、膵内分泌腫瘍、膵嚢胞性疾患、脾腫瘍

乳腺・甲状腺疾患

乳がん、乳腺良性腫瘍、甲状腺がん、甲状腺良性腫瘍

腹部ヘルニア疾患

鼠径ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニア、横隔膜ヘルニア

担当医紹介

  • 山岸 文範

    山岸 文範病院長Fuminori YAMAGISHI

    担当分野
    外科
    得意分野
    胃、大腸、直腸などの一般外科手術とともに、特に肝切除、膵臓、胆管、胆のう、食道がんといった難治疾患の手術経験が豊富です。肝胆膵外科高度技能指導医として若手医師の指導を行う、富山大学の食道がん専門医とともに胸腔鏡下食道切除術の導入を行うなど、この糸魚川地域において都市部に負けない高度で先進的な外科医療を実践しております。さらに、上越および富山東部地区で最大となる6名で構成されている消化器内科チームが同一病棟で治療していることから、診断から治療まで一貫した安定感のある医療を患者様に提供できております。
    卒年
    昭和61年
    略歴
    • 富山医科薬科大学医学部医学科卒業
    • 富山医科薬科大学大学院医学系研究科修了(医学博士)
    • 富山大学消化器腫瘍総合外科准教授
    資格等
    • 富山大学医学部医学科診療教授
    • 日本外科学会 外科専門医、指導医
    • 日本消化器外科学会 専門医、指導医
    • 日本肝胆膵外科学会 高度技能名誉指導医
    • 消化器がん外科治療認定医
    • 日本病院総合医学会認定医
    趣味
    フィットネスジム通い。念願の望遠鏡を買い込んだので、糸魚川の夜空を楽しんでいます。
    一言
    患者さんの表情や仕草で気持ちを知ろうと務めています。安心していいですよ。
  • 澤田 成朗

    澤田 成朗診療部長Shigeaki SAWADA

    担当分野
    外科
    得意分野
    肝胆膵外科、消化器外科
    卒年
    平成7年
    資格等
    • 医学博士
    • 日本外科学会 専門医、指導医
    • 日本消化器外科学会 専門医、指導医
    • 日本肝胆膵外科学会 高度技能専門医、評議員
    • 日本膵臓学会 認定指導医
    • 日本胆道学会 認定指導医
    • 日本肝臓学会 肝臓専門医
    • がん治療認定医
    • ICD(インフェクションコントロールドクター)
    • 日本外科感染症学会 外科周術期感染管理認定、教育医、評議員
    • 日本臨床栄養代謝学会 TNT certificate
    趣味
    トレッキング、ロードバイク、野球観戦
  • 山﨑 豪孔医長Takeyoshi YAMAZAKI

  • 八木 健太医長Kenta YAGI

  • 長森 正和医長Masakazu NAGAMORI

  • 金谷 瑛美非常勤医師(第1・第3・第5月曜午前担当)Emi KANAYA

手術件数

糸魚川総合病院の外科手術は市内の人口減少にも関わらず増加しています。その要因としては

  1. 胃、大腸がんに対する腹腔鏡下手術の増加、
  2. 肝臓切除、胆管がん・膵がんの手術が地方の病院としては多い、
  3. 鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下手術の普及、
  4. 病院に勤務する各診療科の医師指数が10年間で25名から41名まで増え心筋梗塞などの合併症の多い高齢者にも対応できる環境、

などが考えられます。手術手技の安定化もあって2017年度の手術関連死亡率(術後90日以内の在院死亡率)は0.3%と低い数字にとどまっています。

直近の主な疾患の手術件数の推移

  2014 2015 2016 2017 2018
全手術症例 249 261 262 318 327
全身麻酔症例 184 207 213 264 277
腰椎麻酔症例 10 8 1 5 8
局所麻酔症例 55 46 48 49 42
食道がん(鏡視下) 1(1) 1 1(1) 1 3(3)
胃がん(鏡視下) 11(2) 10 12 16(3) 17(6)
結腸がん(鏡視下) 21(10) 16(6) 23(6) 29(14) 32(10)
直腸がん(鏡視下) 8(5) 6(6) 6(6) 14(9) 9(7)
虫垂炎(鏡視下) 16 17 18 21(14) 30(19)
肛門疾患 2 4 7 21 11
肝がん 8 7 7 13 9(2)
胆膵がん 4 0 4 4 6
脾腫瘍 0 2 0 1 0
胆嚢結石症(鏡視下) 13(10) 13(11) 21(8) 26(19) 34(27)
総胆管結石症 0 0 0 1 2
鼠径ヘルニア(鏡視下) 60(37) 57(32) 54(35) 54(39) 64(53)
腹部ヘルニア 3(1) 8 10 9 6
乳がん 15 22 12 18 17
甲状腺がん 1 1 3 2 1

医療情報

糸魚川総合病院外科について

山岸 文範 病院長

鏡視下手術の導入

糸魚川総合病院の外科では腹腔鏡を用いた低侵襲手術を大幅に増やしています。現在のところ大腸癌手術については全症例の80-90%が対象となっており、食道癌手術、胆石症、鼠径ヘルニア、腸閉塞でもおこなっております。

また今年からは一時休止していた胃癌手術の腹腔鏡下手術も再開する予定で準備中です。腹腔鏡下手術は、体への負担が少ないことからメリットの多い治療法ですが、開腹術とは違う技術、知識が必要となります。

当院では、食道癌手術を富山大学から、大腸癌手術は大阪医大、胃癌手術は藤田保健衛生大学、ヘルニア手術は東北労災病院、新潟労災病院より技術導入を図っており、常に第一線の腹腔鏡下手術を提供しつづけています。

肝胆膵疾患

一方で、腹腔鏡下手術の適応とならない疾患もあり、部分切除を除く肝臓切除術、胆道癌、膵癌に対する膵頭十二指腸切除術に対しては、開腹術を選択しています。これらは手術が複雑であることから腹腔鏡下では困難であり、また現時点で私たちが行っている従来の技術による成績および安全性を凌駕することはないと判断しています。

例えば複雑な手術の代表格である膵頭十二指腸切除術では10~30%に膵臓と腸管の吻合部の重篤な縫合不全(グレードB,Cの膵液漏と言います)が発生するとされております。これは出血や敗血症を引き起こす重篤な合併症ですが、幸いなことに糸魚川総合病院では独特の工夫の積み重ねで、最近の20例連続でこのような縫合不全は発生しておりません。

また、この手術では術後には胆汁と膵液を体の外に排出する管を留置するのが一般的ですが、取り扱いが難しく離床が遅れる原因の一つになっていました。しかしこれらの管を体の中にとどめておく工夫により回復がスムーズになっており、患者様はもとより常に患者に寄り添って看てくれている看護師にも好評です。

高齢者への対応

糸魚川市の高齢化率は34%と県内でも最も高い地域のひとつとなっています。例えば大腸癌で入院された方でも50歳であれば、併存疾患はほとんど見られませんが、しかし80歳にもなりますと脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、肺気腫、高血圧、腎機能障害、うつ病、認知症、低栄養のいずれかを少なくとも一つはもっておられます。このような疾患は手術後に大きな合併症を引き起こし術後死亡にもつながりかねません。

糸魚川総合病院では術前の徹底的な全身評価とリハビリを含めた対策、薬や栄養の管理を行うことで安全性の確保に努めています。これが可能になるのは外科医が専門分野だけでなく総合診療を勉強していることと、一人一人の患者に対する徹底した術前検討会、そして他科との連携の良さがあるからと自負しております。高齢だからとか、多くの病気があるからといって治療をあきらめるなどということを決してせずに、迷った場合は外科にご相談ください。評価の上でやむを得ず手術を断念せねばならないこともありますが、どんな場合でも治そうとする熱意を持った、患者に優しい外科医が対応します。