社交ダンス物語 345 プチ減量のススメ

コラム

 小学生だった頃、クラスメイトのお宅へ遊びに行った時のお話です。その子のおうちのおやつに圧巻されました。自分の大好きなプリンやハーシーズのキスチョコレート、泉屋のクッキーとはほど遠いのです。出てきたおやつは、薄くスライスされたサツマイモ、少々。
「太っちゃいけないの。」
小学4年生の女の子は、コワい顔でそう言うのです。彼女は太った大人達を見ると、食べなければ良いのにと言っていました。その子はバレリーナ。バレエの本場、ロシア遠征の経歴もあります。その子のバレエのお教室では、先生が生徒(児童)の手首の太さを毎回測るそうです。母親の体型もチェックされるそうですよ。母親が太っていると、その子も太りやすい体質ということで。ちなみに、社長夫人である彼女のお母様は、『トトロ』のような体型をしていらっしゃいました。

 さて、柔道の競技選手であったうちのリーダーも、食事制限をしていたそうです。中学・高校の頃は、過酷な減量を実践。勝ちたいために、大会では体重別の50キロ以下級に出場。プロテインサプリなどあったでしょうけど、当時は正しい減量の知識はなく、我流で通していたそうです。主食はご飯一口のみ。主菜は魚肉ソーセージを一切れ。副菜はレタスとキュウリ。当然、マヨネーズもドレッシングも抜き。柔道の練習をしていると、当然喉が乾きます。
『水飲まないと、死んじゃう! でも、飲んだら体重が増えちゃう…。』
『50キロを切らなきゃいけない…』
体重計とにらめっこしながら、水を飲んでいたそうです。当時、彼は49.5キロをキープ。

 成人してからは、60キロ以下級へ。同じ60キロでも筋肉だらけの60キロと、脂肪の多い60キロでは、体型は全く異なります。ボクサーやボディービルダーも体をしぼりますが、しぼるといえば、アニメ『あしたのジョー』の力石徹が最も印象的です。Z世代の皆さま、あしたのジョーをご存知ですか? 名前ぐらいなら聞いたことあるって? 減量の代名詞といえば、何と言ってもこの方でしょう。最大のライバル、矢吹丈と対戦するため、大柄の力石は本来のウェルター級66キロから、バンタム級の53キロまで減量します。もともとしぼった状態のボクサーが断食を継続し、13キロの減量です。ありえへん?! 減量のため、水道を縛って水が出ないようにしているのが凄い。「水だ! 水…」と、しまいにはトイレの水まで飲もうとしていましたからね。

 過酷な減量の果ては…。力石は死んじゃいました。うちのリーダーは生きています。競技を退いてからは爆発的に太り、体重が90キロに届くほどへ。女の人と手をつなぎたいという一念で、社交ダンスのサークルへ入門します。そこで競技ダンスの魅力に心を奪われます。
「ひろしちゃん、もっと痩せなさい!」
プロ競技選手の叔母さんから発破をかけられ、またもや減量を再開。ボールルームダンスのアマチュア競技選手としてフロアに立つために、彼は25キロ減量しました。読者の皆さま、ご自分はアスリートでもないしダンサーでもないからと、『減量』をひとごとのようにお考えではありませんか? 決してひとごとではありませんよ。4月といえば、うちの病院では年に2回の職員検診が待っています。手首の太さは測られませんが、お腹周りはしっかり測られます。(オソロシイ)食べ放題、飲み放題の筆者を含む下腹ポッコリさんへ、プチ減量しませんか? 食べたくても、唐揚げは3個までにとどめましょう。えっ? 無理ですって? 力石やうちのリーダーの減量苦に比べれば、極楽ですわ。(笑)そうそう、かつての小学4年生のバレリーナのコトバ、コワすぎ!

☆メタボこそ最大のライバル?

著者名 眼科 池田成子