社交ダンス物語 351 全日本シニア選手権(前編)

コラム

 毎年6月に東京で開催される日本インターナショナルダンス選手権大会に併設、全日本シニア選手権にチビ・ハゲ組はエントリーいたしました。本年度の会場は、有明コロシアム。泣いても笑っても、人生は一度きりです。死ぬ時、ダンスで後悔したくはありません。二度にわたる脊柱管狭窄症の手術を受けて、背骨の骨が完全にくっついていないリーダーと、××を告知され富山の大学病院で手術を受けて2日後のパートナーは、糸病の講堂でダンスの練習に挑戦します。チャチャチャのスプリット・キューバン・ブレイクで、パートナーは左腕を激しく振り上げるっ! ××の術後の、リハビリにもってこい? 病持ち、競技選手として「往生際悪すぎ」を通り越し、「キチガイの為せる業」をも凌駕し、もはや「神の領域」と崇められちゃう?(笑)
「いたいの いたいの とんでけー!」
自分達におまじないをかけて、ダンスの大会に臨みます。
 
 今回のラテンアメリカンの3種目は、チャチャチャとルンバとパソ・ド・ブレ。チャチャチャは陽気でリズミカルな踊り、ルンバは男と女の愛の駆け引き、パソ・ド・ブレは闘牛をイメージした力強い踊りです。それぞれの種目には特徴があり、踊りで表現しなければなりません。大会直前の最後のレッスンにて、チャチャチャを踊ってみせました。コーチャーからのコメントは…。
「あなた達の踊りは、床に浮いて見えます。」
浮いて見えるのは送り足がないからで、全体的に軽く弱く見えるそうです。重心は下、床をプレス!を意識しつつも、チビ・ハゲはステップを踏むのが精一杯です。(涙)ダンスは急に巧くはなりません。なお、自分たちの踊りは音に早いそうです。ジャッジ、観客そして選手に共通しているものは音、音を意識して、音にクリアに踊りなさいとコーチャーは力説。かつての日本武道館での大会がそうでした。通常の体育館とは異なり、天井の高い会場では音がファーンと反響して、聞き取りにくいのです。
 
 次にルンバを踊ってみせました。コーチャーからのコメントは…
「粘りがありません。」
自分たちは出だしから、全くダメだそうです。ルンバは男と女の愛の踊り、出だしをもっとドラマチックに!とのことでした。(彼女いない歴58年のリーダーは、ドラマチックな男女の愛ってどう表現するんだ?と、目を白黒させています。)天井の高い大きな会場で踊るのだから、いつもの表現とは変えて踊りなさいとのこと。チマチマと踊ってはダメ、大げさに首筋をぐっと使うよう指示されました。足元が弱くても、芸能人の社交ダンスのように、みせて踊ることが肝心だそうですよ。
 
 最後の種目は、パソ・ド・ブレ。自分たちの見せ場は、シャッセ・ケープ。これは闘牛士が赤いケープを翻し、牛を挑発するシーンです。リーダー(男子)が闘牛士役で、パートナー(女子)はケープ、時には獰猛な牛になります。ルンバ同様に、シャッセ・ケープもトップラインを広くみせるため、首を使うよう指導されました。そして今回のテーマは『送り足』です。アペルを踏む時や、セパレーションも送り足を意識。そして、本日のレッスンは終了となりました。
「楽しんで、いってらっしゃい!」
コーチャーは意味ありげに笑っています。(まるで、ひとごと?)日本の強豪たちとのコロシアムでの闘い、ハッタリで表現せよと、チビ・ハゲは送り出されたのでした。
 
 
☆嗚呼ハッタリ、自分たち、毎回ダンスはそう。(涙…笑)
著者 眼科 池田成子