社交ダンス物語 356 リーダーとパートナーの会話 37

コラム

 夜中の病院の講堂には、ルンバウォークをしている病持ち50代独身男女の姿あり。自分たちって、根性があるの? 脊柱管狭窄症の手術を受けたリーダーは、まる2年たっても背骨の骨は完全にくっついておらず、コルセットは必需品です。なお今年の5月に××の手術を受けたパートナーは、生存率の向上を図るため10月には左胸に原爆が落とされる? チビ・ハゲ、競技会では踊りが変わったと、ジャッジやお客様から思われたい。そのためには地道なウォークが肝心です。マタニティビクスで使われていたミラーに姿を映して、病持ちはヨロヨロとルンバウォークをしています。
 
リーダー:「♪思いこんだら 試練の道を〜 行くが男の ど根性〜」
パートナー:「巨人の星の主題歌ね。血の汗流せと言ったら、いつの時代のことですか?と、Z世代の子は怯えそう。」
リーダー:「そうだね。時代錯誤だ。」
 
 病持ち、30分ほどルンバウォークした後に、ヨタヨタと組んで愛の踊り、ルンバを踊り始めました。
リーダー:「成子さん、早いよ。リードを受けてから動いてよ。」
パートナー:「あなたのリードが遅いのよ。」
リーダー:「そんなことないよ。成子さんは、自分から先に動いている。」
社交ダンスでは、女子は「待つ」「受ける」「ゆだねる」が三原則でした。自分は待つのが大の苦手。苦し紛れに、今度はパートナーの歌声が…
 
パートナー:「♪私待つわ〜 いつまでも待つわ〜」
リーダー:「僕たちが高校生の頃の曲だね。」
パートナー:「ジェンダー平等の時代に、待つ女は時代錯誤よね。社交ダンスもそうなの?」
 
 それから病持ち、おもむろに組んでワルツを踊り始めました。
リーダー:「ラテンはともかく、スタンダードは辛いよ。腰にくるからね。」
パートナー:「スポーツドクターのY先生(第157話)から耳打ちされたわ。勝ちたければ、男を変えろって。」
リーダー:「……。」
パートナー:「あなたにとって私は、5人目のパートナー(女)。私、リーダー(男)は、あなたしか知らないの。試合ではいつも負けてばかり。でも、別の人と組んで踊ったら、勝てるかも。
 
リーダー:「♪あなたのために〜 守り通した女の操〜 今さら他人(ひと)に捧げられないわ〜」
パートナー:「古すぎっ!50年前にヒットした曲ね。殿さまキングス。」
 
 Z世代の皆様、殿さまキングスをご存知ですか? 嗚呼昭和、レトロ可愛い?(笑)
 
 
☆病持ち、頑張っています! 病気の人もそうでない人も、糸病コラムを通して、チビ・ハゲは応援いたします!(笑)
 著者 眼科 池田成子