社交ダンス物語 360 パートナー、二人旅

コラム

 この度、松本へ行ってまいりました。関東甲信越のダンス遠征で春と秋、年に2回は松本へ行きますが、今回の目的は旅行です。リーダーと競技ダンスのカップルを結成してからは、仕事とダンス中心の生活で、旅行から遠のいていました。そんな自分に、ある方から旅のお誘いがありました。これも何かのご縁でしょう。この度、松本への一泊旅行のお誘いを受けることにしました。
 
 その方とは年に数回、富山で開催される眼科のセミナーで隣の席になった時に、挨拶を交わすおつきあいです。お茶したことはありませんし、お食事をご一緒したこともありません。私のことを気にかけて下さっていたの? いきなり二人きりの旅をして、しかも同室に泊まって大丈夫? えっ? その人は男性か女性かですって? 男前で素敵な方。しかも独身。年上の女医さんです。(笑)
 
 松本へのダンス遠征は高速道路を使うか、もしくは国道148号線を使って、リーダーの車で移動していました。今回はリゾートビューふるさとに乗って、大糸線での電車の旅です。一両編成の大糸線、ワクワクしますね。『松本ホテル花月』を予約して下さいました。明治20年創業の、由緒あるホテルだそうです。嬉しい反面、お泊まりには心配事が…。そこで先生に、メールを打ちました。
 
池田:「姉のいびきが大きすぎて、かつて妹から顔を踏まれました。どうしたものでしょう。」
すると、即座に返信あり。
先生:「いまAmazonで睡眠用耳栓を注文しました。」
ほっ。
 
 週末を利用した旅です。北陸新幹線で長野へ行き、長野からはリゾートビューふるさとに乗り換えて、松本へ行きます。新幹線は自由席。先生は先に新幹線に乗っていて、糸魚川で合流です。ご自分が乗っている車両と席の番号を携帯電話で知らせてくださるとのこと。糸魚川駅の新幹線乗り場にて、じきに新幹線が糸魚川駅へ到着する時刻というのに、電話がありません。そのまま乗り込もうとしましたが、ちょっと待て。ザワザワしたので、こちらから電話しました。すると、まだ新幹線に乗っていないとのこと。どうやら自分は一本前の新幹線と思い込んでいました。乗らなくて正解、危機一髪でした! ほっ。
 
 1時間後、無事お隣の席に座ることができました。すると今度は先生が「ない!」とザワザワし始められました。乗車券がないそうです。落としたのではないかしらと。ない筈はないですから、カバンの中を探すよう申し上げました。自分は座席の下や通路を探しました。かつて東京駅のホームで新幹線のチケットがないと大騒ぎしたことがありました。当時はガラケーでしたが、ガラケーの折りたたみの中にジャストフィットでチケットが挟まっていたことがありました。JRの乗車券は、先生のカバンの中から見つかりました。ほっ。
 
 長野からリゾートビューに乗り換えて、松本へ到着。200円出してバスでホテルへ行く予定でしたが、バスの待ち時間がもったいないと言われ、タクシーでホテルへ。ホテル花月はクラシカルでゴージャスなホテルでした。鹿鳴館時代へタイムトリップしたかのよう。ここにダンスホールがあったら最高でしょう。フロントでお部屋の鍵を受け取り、まず自分達がしたことは非常口の確認です。年に2回、自分のマンションでは非常扉の点検があります。もしもの時に備えて、高級ホテルのベランダにある非常口の蓋を開けて、逃げるシミュレーションをしました。(そんな客いる?)その後、非常口の蓋を締めようとしたら、全開となった蓋のちょうつがいが硬くて、蓋は閉まらないのです。
「ジーザス!」
火事場の馬鹿チカラ? 非常口の蓋を女二人で無理矢理ねじ込みました。ほっ。
 
 両手はサビで真っ黒です。お部屋で手洗いした後に、喫茶室八十六温館(ヤトロオンカン)で珈琲をいただき、その後松本城を観光。ホテルのお部屋へ戻りました。またもや「ない、ないっ!」と、二人はザワザワ。先程まであった、お部屋の鍵がないのです。昔ながらのクラシカルなお部屋なので、フロントから渡されたのは木製のキーホルダーに付いた鍵一つだけです。鍵は一体どこにあるのでしょう? 部屋中探しても見当たりません。もしや…。鍵を見つけました! 鍵はお部屋のドアの鍵穴に入れたままになっていました。ほっ。
 
 そしてホテルで夕食。フレンチのコースです。それにしても、このホテルのお客さんは外国人の方が多いです。ホテルには大浴場があります。外国人観光客は、水着を着ないで大浴場へ入るのかしら? 自分は××の手術を受けたので、日本人とはいえ大浴場に入るには勇気がいります。先生いわく、外国の方はそんなことは全く気にされないとのこと。そこで、シャワー派の自分は非日常である湯船に浸かるため(第242話)、大浴場へと向かいました。外国の方、いらっしゃいました。スッポンポンでした。そこで圧巻されました。胸の大きさは自分の30倍はある?
 
 大浴場から戻り、次なる心配事はいびきです。先生は耳栓持参とのことですが、本当に大丈夫? 入院患者さまの中には、いびきが大きいので、よその患者さまに悪いからと、個室を希望される方もいらっしゃるくらいです。気が気ではありません。翌朝、恐る恐る先生にたずねました。私のいびきは、大きくありませんでしたか? 安眠できましたか?と。いびきは全くなくて、耳栓は要りませんでしたとのこと。ほっ。(その耳栓、アタシが欲しかった!)
 
 二日目の朝は、自分にとって非日常の『朝ご飯』をいただき(第37話)、帰路へ。松本駅でお土産を買っている時、「ない!」でまたザワザワ。先生がお買い求めになったお土産が入った紙袋がないとのことです。走れメロス! 自分はお土産コーナーを探し回りました。そしてお土産袋を発見! お土産袋は、お店のレジ台の上に鎮座していました。ほっ。
 
 帰りの大糸線の車窓からは、車では体験できない幻想的で神秘的な風景を満喫。無事、糸魚川駅へ到着。駅の改札口を出たとたんに、非日常から日常へ戻されました。なぜならば、そこにはうちのリーダーの姿があるからです。パートナーを拾って、糸魚川総合病院へ直行するため。そう、ダンスの練習です。
 
 「ないっ!」でエキサイトした、味わい深き一泊二日の女子旅でした。次は二泊三日で佐渡へ行きましょうと、誘ってくださいました。旅のレポートができる日が来ることを、楽しみにしています。ところで、シニアの旅には「時間の間違え」や「ない!」は、付き物なのでしょうか? えっ? あるある!ですって? ほっ。(笑)