社交ダンス物語 340 三通り

コラム

 三通りといえば、何を連想されますか? 肉の焼き具合ですって? そうですね。一般的に知られているステーキの焼き具合は、レア・ミディアム・ウェルダンの三通り。私はミディアムが好みです。小包や紙袋のサイズは大・中・小。痩せている・太っている・普通といった体型も三通りで表現されます。良い子・悪い子・普通の子、いましたよね。懐かしいです。昭和の時代は『イモ欽トリオ』が、一世を風靡しました。(笑)ちなみに、筆者が子供だった頃の小学校の通信簿は、A・B・Cでした。Aは大変良くできました。Bは良くできました。Cはもう少し頑張りましょう。ちなみに競技ダンスにおいてもA・B・Cのランクがあります。通信簿とは大違いですよ。「C」は素晴らしい。「B」は雲の上の人。「A」は神様級です。なお性別においては、昭和の時代は「男」か「女」。現代においては三通りと選択肢が増えました。男・女・ジェンダーレス。性別を書く欄のない書類もあるそうですね。

 さて、筆者の弟は浄土真宗のお坊さんで、教誨師をしています。その弟が言うには、お坊さんにも三通りあるそうです。『ヤクザ坊主』、『生臭坊主』、そして『乞食坊主』。ちなみに。弟は自称『乞食坊主』だそうです。ヤクザ坊主と生臭坊主を兼ね備えた、知り合いのお坊さんがいました。派手な袈裟を付けて、ベンツを乗り回していましたね。毎晩のように、富山市内の桜木町(歓楽街)に出没。浴びるように酒を飲み、初対面の女の人に吸い付いていました。吸い付いたら、スッポンのように離しません。その坊さん、今は乞食坊主をしています。夜中に改良衣(黒い僧服)で、地元のスーパーに出没。赤札が何枚も重ね貼りされている生肉や魚を、なりふり構わずあさっているそうです。これはお隣の富山県に住む弟情報です。ちなみに、午後8時すぎにスーパーの買い出しから戻ってきたという弟から、ラインが届きます。
「今日は大漁!富山湾産アオリイカ半額!!」(いいねマーク)

 三通りといえば、お坊さんのみならず、お医者さんもそうです。大学病院に残るか、開業するか、勤務医のままでいるかです。定年まで大学に居る保証のあるお医者さんは、ピラミッドの頂点に立つ教授先生のみ。研修医として自分が大学の医局にいた頃、そこはまさにアップ・オア・ドロップアウトの世界でした。(第22話)
「開業は、墓場だ。」
そう言って、ねばって大学に籍を置いていた先輩もいましたね。その先輩、最後は観念なさって開業されました。開業医として大成功しておられます。(笑)そういえば学会のセミナーで、ある勤務医の先生が、こうおっしゃっていました。
「頭の良い医者は大学に残る。腕に自信のある医者は開業する。そのどちらでもない医者は勤務医をしている。」
うんうん、自分は素直に頷けます。(苦笑)

 最後に、ボールルームダンス(社交ダンス)にも、三通りあると言われます。『楽しいダンス』、『美しいダンス』そして『勝つためのダンス』です。楽しいダンスとは、踊っていて自分がハピーになれるダンスです。そこではダンスの上手下手は関係ありません。音を外していようが問題なし。人の目を気にするなんて、愚の骨頂! 踊っていて自分達が楽しければ、それで良いのです。次に美しいダンス、これは人の目が重視されます。そのためには、相当の技術を要します。「デモラー」という用語があるように、パーティーや発表会で一組がスポットライトを浴びて踊りをご披露するためには、先生もしくはパートナーと相当のレッスンや練習を積まなければなりません。最後に、勝つためのダンス、それは競技ダンスです。そこでは美しくて当たり前。競技は、比較対照の世界です。より身体能力があり、自己表現力に優れ、人の心をつかむカップルが勝ち上がります。自分たちチビ・ハゲは、競技ではいつも最下位を維持。(涙)最下位でも良し。アマチュア競技ダンスは自分たちチビ・ハゲ中年にとっては『楽しいダンス』です!(笑)


☆ ダンス、三通り。病持ちチビ・ハゲ、ダンスの練習においてもウルトラマンのカラータイマー。それでも、勝つためのダンスを目指します。

著者名 眼科 池田成子