社交ダンス物語 398 ないっ! 埼玉県大会

コラム

 前期関東甲信越の大会は、ダンスもたけなわです。チビ・ハゲ、埼玉県大会にエントリーしました。会場は熊谷市、くまぴあ(熊谷市スポーツ文化村)。大会は5月4日、GWの真っ只中です。試合当日の早朝に糸魚川から車で会場へ向かうのはリスクがあります。しかも長距離の遠征です。安全はお金で買う時代、会場から近い深谷市のホテルに前泊することにしました。深谷市といえば、新一万円札の顔写真、渋沢栄一の出身地です。試合前日の午後3時すぎに、余裕をもって深谷市へ到着。
 
 ホテルにチェックインしてから時間があったので、深谷市の玄関口であるJR深谷駅を散策しました。深谷駅は赤レンガでできていて、東京駅そっくりです。東京駅が深谷市産のレンガを用いて造られていることから、『レンガの街』をアピールする目的で東京駅を模したデザインで改築されたそうですね。深谷の駅前広場には、渋沢栄一の巨大な銅像があります。駅の構内のコンビニを覗いてみました。渋沢グッズやお菓子、渋沢カレーがお土産品として販売されています。商品の中で一際目を惹いたのは、『渋沢栄一お札サブレ』。えっ? ゼロが8つ! 菓子箱は一億円札の札束に似せて作ってあり、ドーンと棚に鎮座。
リーダー:「そんなにあっても、どう使ってよいか分からないよ。」
パートナー:「まずは、お風呂と洗面所の水回りを直すわ。トイレの便座も。」
 
 今回宿泊するホテルの真ん前に、昔ながらの鰻屋があります。チビ・ハゲ、鰻は大好物。深谷駅散策の後、吸い込まれたかのようにお店に入っていました。夕食の時間としては早いのでしょうか? お客さんはまだ誰も入っていません。席につくと、店内の棚にも渋沢栄一の小さなブロンズ像が置いてありました。おしながきを開いて、チビ・ハゲは瞬時に固まったのです。まるで、ブロンズ像のごとし? うな重のお値段は、自分達が行きつけの全国チェーン店のうな丼の4倍します。このお店では、国産のブランド鰻を取り扱っているようです。お店の人が注文を取りにきました。
リーダー:「えーっと…。生ビール2つお願いします。」
 
 とりあえず、ビールで乾杯。追加(時間稼ぎ?)で枝豆と冷奴を注文しました。チビ・ハゲ、冷奴を突っつきながら、ビールをチビチビと飲んで思考しています。
パートナー:「で、ウナギはどうするの?」
リーダー:「柳川定食、鳥の唐揚げ定食、トンカツ定食もあるよ。うな重の値段の3分の1から4分の1だ。」
パートナー:「もう少し、考えましょう。」
するとお客さんがお店に入ってきました。常連さんのようです。お客さん、席につくやいなや、鰻の白焼きを注文。
パートナー:「鰻料理専門店で、ドジョウやトリ、豚を注文したら笑われるわ。」
リーダー:「そうだね。鰻屋に入って鰻を食べないなんて、何をしに来たんだ?と、怪訝に思われそう。」
ダンスの競技選手はビンボーです。レッスン料、ドレス代、競技会出場料、交通費、宿泊費など、何かとお金がかかりますので。
 
 とはいえ、チビ・ハゲ、鰻屋で意を決する。
リーダー:「うな重一つお願いします! 取り皿を2つ下さい!」
うな重が運ばれてきました。日頃食べている鰻と、見た目もお味も全然違います。同じ鰻なのに別物。こんなにも違うの? ダンスも然り? これは自分達の競技ダンスに当てはまることです。(涙) 
 
 ビールはなくなってしまいました。こんなに美味しい鰻には、地酒が欲しくなります。明日は試合というのに新潟から来た往生際の悪いチビ・ハゲ、地元の冷酒を注文していました。お店では、菊泉の生吟醸が提供されました。
パートナー:「美味しい!」
リーダー:「成子さん、明日は戦利品として帰りに買ってゆこう。」
新潟から来た吞ん兵衛は上機嫌。
 
 埼玉県大会、肝心の試合結果は…。アマチュアB級ボールルームもB級ラテンも終予選まで。シニアB級ボールルームは決勝6位。グランドシニアA級ラテンは1回負け。チビ•ハゲ、埼玉県大会で良い成績を残した記憶はほとんどありません。よって、祝杯のための地酒をゲットしたこともありません。とはいえ、今回は地元のコンビニへと向かいました。
リーダー:「ないっ!」
パートナー:「あるのは新潟のお酒よ。上善如水!」
ないっ!の埼玉県大会。競技会のフロア同様に地元のコンビニでも「ヤラレタ!」の、新潟から来たチビ・ハゲなのでした。(苦笑…笑)
著者 眼科 池田成子