関東甲信越の競技会では負けてばかりのチビ・ハゲ、6月15日に有明コロシアムで開催されるグランドシニア選手権ラテンアメリカンにエントリー。チビ・ハゲ、負けると分かっているのに何で出場するんだ? はい、出るのは自由です。人生後半、楽しまなきゃ損!(笑)全日本の大会は、今まではシニアの部(出場資格は男女ともに35歳以上)に出場してまいりました。グランドシニア選手権は今回が初出場です。グランドシニアの出場資格は、リーダーの年齢が55歳以上。日本全国から28組の選手がエントリーしました。
試合前日の6月14日、チビ・ハゲは東京駅に降り立ちました。明日の大会に備えて、最終確認がしたいっ! 時代のすう勢でしょうか。都内のダンス練習場は、次々と閉店してしまいました。どこで練習したらいいの? そこで、映画「Shall We ダンス?」の舞台モデルとなった都内最古にして最後のダンスホール、『ダンスホール新世紀』に駆け込むことに…。
田舎人、山手線に乗り、ラブホテル街の鴬谷へと向かいます。
リーダー:「東京のニオイがする。」
パートナー:「そうよね。」
JRの路線や地下鉄で移動する際に、都内では田舎にはない東京独特のニオイがいたします。うちのリーダーいわく、『香水』と『ドブ』のニオイとか。東京は外国の方が多いですし、いろんな香りが入り交じって田舎人には刺激的!
午後3時すぎに、ダンスホール新世紀に到着。
リーダー:「成子さん、他のお客様の邪魔にならないよう、隅の方でコンパクトに踊ろう。」
ダンスホール、そこは紳士淑女の社交の場です。競技選手がバンバン踊るのは御法度。つまみ出されてしまいます。
リーダー:「目立ってはいけない。小さく、小さく…。」
明日の大会の競技種目は、ルンバとチャチャチャです。田舎から来た競技選手、最初はベーシックの足型で、隅っこで小さく踊っていました。しかし、いつしか…。
チビ・ハゲ、ふと我に返る。周りのお客様に一礼して、一目散にダンスホールを去りました。これぞ、まさに『踊り逃げ』?(苦笑)それにしても東京は、ステキな所ですね。ニオイは多少気になりますが、ヒューマンウォッチングが楽しめるのですから。外を歩いていて、不思議な服装の女の子やおじさん、奇抜な行動の外国人など、退屈することがありません。
ホテルに戻ると、自分は全身にタンニングローションを塗り始めました。ラテンでは強く見せるために、肌を黒くしなければなりません。1年前の大会で、会場の一角にあるショップで展示販売されていたラテンのドレスに目が釘付けになりました。(第377話)吸い寄せられたかのようにドレスの前で、自分は立ち止まっていましたね。どなたがお召しになるのかしらと。自分を虜にしたドレスを着用して、本年度の大会は大舞台で踊らせていただくのです。こんなに光栄なことはありません。どんなドレスかですって? はい、立っている時はフリンジで隠れますが、踊ったらお尻丸見えのシャンパンゴールドのドレスです。ぬかりなく、お尻を黒くしなければなりません。
「お肌、大丈夫?」
大会当日の朝、お坊さん(弟)がたいそう心配してラインをくれました。アラ還のおばさん(日本昔ばなしなら大婆さん)が、お尻の割れ目まで肌を黒く焼いたのです。ダンサーとして自分は勇敢だと思います。そう、肌を黒くするには3通りあります。(第162話) 競技ダンサーは人に体を見せてナンボ、見られてナンボです。それは若い子もおばさんも同じですよ。えっ? おばさんがお尻の割れ目まで焼いて観衆に魅せようだなんて、公害ですって?!(笑)
会場に入り、選手受付をしました。自分達の背番号は27番。選手控え室へむかいました。選手控え室の向かえのトイレのドアに、赤字で『注意』と書かれた貼り紙がされていました。
「タンニングをしている選手の皆様、トイレ使用の際には必ず便座シートをお使いください。」
はい。白い便座が小麦色になりますよね。納得いたします。(笑)
全日本選手権グランドシニアラテンアメリカン、いよいよ一次予選が始まります。チビ・ハゲ、勝とうだなんて、微塵も思っておりません。有明コロシアムの大舞台で大観衆の中、日本の強豪と一緒に踊らせてもらえることに感謝! これはチビ・ハゲへのプレゼント? ありがたくも予選では2回も踊らせていただきました。アリーナ入場口付近の通路には、次のラウンドで踊る選手達が並んで待機しています。自分もその場所に立っていたら…。んんっ? 何だか違う。緊迫感あるこの異次元空間は…。
リーダー:「違うよ、成子さん! そこはこれから最終予選を踊るアマチュア選手が並んでいる場所だ!」
納得いたしました!(笑)
☆さらなる高みへ。ダンス、バンザイ!
著者 眼科 池田成子