社交ダンス物語 408 いつ、老後?

コラム

 うちのリーダーが30年近く通っていた行きつけの床屋さん、都合でしばらくお休みしますとのこと。
「どうしよう…」
ボールルーム・ダンサーにとって、ヘアスタイルは重大です。かつて日本インターナショナルダンス選手権大会では、ヘアスタイルが斬新的で素晴らしい選手に、協賛のサンスター株式会社から『VO5ベストドレッサー賞』が授与されました。賞品はヘアスプレー1年分。(予選落ちでも、ベストドレッサー賞に選ばれた選手は、表彰式まで残ってなきゃいけない)
まずは床屋さん探しから。リーダーは短時間で、2000円という床屋さんに着目。
「どんな床屋なのだろう…」
ドキドキしながらお店へと入ります。
 
 ボールルームダンスの髪型は、フツーの髪型とは異なります。お店の人にイメージを伝えるため、かつて競技会で撮影した、正面、横、後ろ3方向の自分の画像を見せました。
リーダー:「このように、カットして下さい。」
理髪師さん:「指揮者?」
指揮者?と聞いてくるのには頷けます。スマホの画像では、スタンダードの正装である燕尾服で映っています。ボールルームダンスに馴染みのない方にとって、燕尾服は特殊な服装のようですね。作曲家であり、アカデミー女性合唱団の指揮を務めていた筆者の父は、燕尾服やタキシードでタクトを振っていました。
リーダー:「いえ、社交ダンスです。」
そこでリーダーは、お店の中でホールドを組んで見せたそうです。
理髪師さん:「いい老後を楽しんでいるね〜。」
 
「えっ? 老後?!」
 そう言われて、リーダーはショックを受けた模様。ここで、『老後』について考察してみましょう。30代と思われる理髪師さんから見れば、60歳のオジさんは老人? 筆者が小学低学年だった大昔は、老人会といえば50歳から入会可でした。当時50歳といえば、自分の5倍以上生きている長老。高校球児が可愛いオジさんに見えましたからね。さて、ここで質問です。現代において老後とは、一体何歳からでしょう?『老後』が何歳から始まるかについては、人によって捉え方が異なります。多くの調査では、65歳前後が意識されているようですね。生命保険文化センターの調査によると、老後資金を使い始める平均年齢は66.8歳。なお、老後資金を使い始める年齢分布では『65歳』が最も多く34.2%を占め、次いで『70歳』が23.4%、『60歳』が11.7%となっています。全体を平均すると、男女ともに67歳くらいからを『老後』と考えられているようです。
 
 そう、老後で最強にインパクトありといえば、きんさん、ぎんさん。国民的アイドルで百歳を過ぎてもTV、ラジオ出演、CDデビューで大忙しであった双子姉妹。
「仕事はいつ辞めよう。年金は、いくらもらえるの?」
そう心配してビクビクしている、みみっちい糸病・眼科の池田とは大違い。きんさん、ぎんさんは、百歳を過ぎてもメディアの出演などでお金が入ってきます。
「お金は何に使いますか?」
その問いに対して、お二人揃って
「老後の蓄え!」
そう答えて、皆を笑わせておられたのが印象的。ちなみに、ギャラは全額寄付しておられたそうですね。お二人とも、ステキな老後を満喫なさったことでしょう。
 
 人生100年時代。100歳からでも老後あり。笑ってよいのか、凍り付くのか…。そうそう、前述の床屋でカットしてもらったリーダーの頭は、どうなったかですって。最初は口の悪い若造と思ったそうですが、仕事はプロ。次回はもっと大胆なカットをお願いするそうですよ。高齢化が進む日本で、うちのリーダーは60で老人呼ばわりされてショックを受けたとはいえ、若い人から『社交ダンス』イコール『いい老後』と評価されたことは、たいへん喜ばしいことだそうです。
 
 最後に。お恥ずかしながら眼科医、ここのところ「ない!」「見えない!」の連続です。かつては見えていた直径0.02ミリの10−0ナイロン手術用の糸と針が、肉眼では見えづらくなったのです。さすがの眼科医も、老眼には勝てません。手術室での一コマ。
眼科医:「あれ? 糸、ない!」
ナース:「先生、ここです。」
眼科医:「えっ? どこ? 見えんわ!!」
ナース:「ここにあります。」
眼科医:「どこ? どこーっ!!(ムンクの叫びマーク)」
老眼は40歳前後から始まり、60歳まで進行します。こうなったら発想の転換。人生楽しんだもの勝ちです。
「文字が見えない!」
「老眼鏡はどこだ!」
老いを楽しむのも乙なものでは? 少なくとも目においては、60歳から立派な老後と言えましょう。シニアの皆さま、粋なメガネで今を楽しみましょうね。(笑)
著者 眼科 池田成子